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AI(人工知能)イノベーション

AI(人工知能)
情報化時代の新たな主役に躍り出たテクノロジー

2016年10月26日

ビジネスエコシステムを語る上で欠かせない、着目すべきキーワードをピックアップし、そのトレンドの一端を紹介する本企画。今回は、「AI(人工知能)」にスポットを当て、その動向を探ってみたい。

急速に進化するAI

「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」とは、人間が知能を使って行うこと(知的活動)を人工的に実現するための取り組み、あるいは技術を意味する。人間の知的活動は脳が担うのに対して、AIではコンピュータなどの電子機器がその機能を果たしているというのが最大の特徴だ。コンピュータは人間の代表的な知的活動である「計算」を行うために開発された装置だが、その後の技術進歩によって認識、記憶、分析、予測、判断といった様々な機能を身に付けたことにより、最近では人間をしのぐほどの能力を発揮する事例も多数発表されている。

AIは、コンピュータとともに歩んできた。単に計算するだけでなく、人間のように物事を考えることができるコンピュータの開発は、研究者にとって大きな目標である。ちなみにAIという言葉は1956年に米国で開かれたダートマス会議で初めて使われたもので、以来半世紀以上にわたる歴史を刻んでいる。

人間の知的活動は高度かつ多岐にわたるため、すべてを単独でカバーする機械の開発は難しい。したがって、実際の研究は知的活動を様々な領域に分け、その一部と同様の働きをすることで問題解決を図ることに重点が置かれている(下図「AIの研究分野」参照)。一般的にAIは「知能を持つ機械」と捉えられているが、コンピュータが計算という知能を持っていることなどから、いまひとつ全体像が理解されにくい部分がある。

AIの研究分野出典:一般社団法人 人工知能学会の資料を基に作成

上図に示したAIの研究分野は、すでに社会の幅広い分野で実用化されている。例えば、センサーでゴミを感知ながら自走する掃除機や、部屋の温度を認識して自動運転するエアコンといった「AI家電」は、機械を制御する人工知能として身近な存在だ。また、スマートフォンに搭載された音声による操作アシスト機能も、言語認識という知能の一領域をコンピュータが担うAIである。

これらのAIがあらかじめ決められたルールに基づいた知的活動を行うのに対して、数多く蓄積したサンプルの中から最適な答えを見つけ出すことに特化した研究も行われている。囲碁や将棋などで使われるAIは著しい進歩を見せており、近い将来には人間の能力を超えるだろうとの声も聞かれるようになった。

AIがこのような進化を遂げた第一の理由は、コンピュータの能力が飛躍的に向上したことが挙げられる。これによって、従来処理できなかった膨大な情報(ビッグデータ)を管理できるようになり、高度な知的活動が可能になった。また、これらのデータを基にコンピュータが自動的に認識し、学習する手法(ディープラーニング)が生み出され、自ら物事を判断する能力を身に付けたことも発展の弾みになっている。刻々と変化する道路状況を把握しながら走行する自動運転車の技術は、AIの進化を象徴的に物語るものだ。

ビジネスシーンにおける活用の場も増えてきた。例えば企業のコールセンターでは、電話を受けるオペレーターを支援する目的でAI導入が進んでいる。顧客からの問い合わせ内容をリアルタイムで分析し、最適な回答を導き出して表示するこの仕組みはここ数年で急速に普及し、強力なツールとして存在感を増している。また、小売業界では店舗の各売り場を案内したり、閉店後に店内を巡回して発注や商品配置をアドバイスしたりするロボットにAIが取り入れられ、これまで人手に頼っていた業務をある程度肩代わりできるレベルに達しつつある。そのほか、医療や広告、金融など様々な分野で用いられており、最近はAI関連の話題を目にしない日がないほどの状況だ。まさに時代のキーワードといえるほどである。

AIによる異業種間融合の進展の例出典:総務省情報通信政策研究所「AIネットワーク化検討会議 報告書2016」の資料を基に作成

しかし、AIの高度化を手放しで喜んでばかりはいられない。先ごろ総務省が公表した報告書では、AIを構成要素とする情報通信ネットワークの進展により新たな製品、サービスが続々と創出される一方、職業や雇用のあり方など社会構成に変化が表れたり、セキュリティ問題や制御喪失を原因とするリスクが顕在化したりする恐れがあることが指摘されている。今後も技術向上に注力すると同時に、AIが人間の良きパートナーとしてあり続けるための検討を重ねることが大切だ。