close

AI(人工知能)IoT

AIドローン×台風発電×IoT……世界が抱える課題を「オープンイノベーション型エコシステム」で解く

2016年7月25日

科学技術の発達は社会を変えていく可能性は高い。世界が抱える課題を一気に解決することになるかもしれない。しかし、1社ですべてをカバーすることはできない。求められているのは、それぞれが強みを持ち寄って連携するオープンイノベーション型エコシステムである。すでにそうした取り組みが始まっている。

ロボットをより身近にする
クラウドロボティクス

「ビジネスをつなぐ」ことでどのような価値が生まれるのだろうか。「例えば、SNSに投稿した食事の写真をグルメサイトと共有することで栄養素が分かる、グルメサイトと予定管理が連動することで自分の好みの店が自動的に予約される、予定管理とタクシー配車がつながることでコンシェルジュのような動きができる、といった新しい動きが連鎖的に広がっていきます」と、日本ユニシス総合マーケティング部事業開発室の大堂由紀子は、一見関係のないビジネスがつながることでの可能性の広がりを示唆する。

日本ユニシスでは、こうした業界を超えたビジネスエコシステムに多様なAI技術を取り入れる試みを推進している。画像・音声・言語処理技術、統計・推論や予測技術など、10年以上前から取り組んできたAI(人工知能)をコアテクノロジーとして、様々な用途でビジネスをつなぎ、サービスを動かすのが狙いだ。大堂は「オープンイノベーション型エコシステムで重要なのはオープン&クローズ戦略。単に社外の技術を取り込むだけでなく、お互いの強みを連携していくことです」と話す。

その1つがRapyuta Roboticsとの連携だ。同社はロボットに特化したクラウドサービス「クラウドロボティクス」のリーディングカンパニーで、小型ロボットをインターネット経由で遠隔から利用できるようにするサービス(Robots-as-a-Service)「Rapyuta Robotics」を公開している。

「私たちのチャレンジは、ロボットと人間が一緒に働くための仕組みを提供することです」とRapyuta Roboticsの代表取締役COO、クリシナムルティ・アルドチェルワン氏は語る。そのために同社ではクラウドとドローン(無人機)を組み合わせて提供する。「データの保存や処理をクラウドに任せることで、ロボットを軽量化でき、価格を安く抑えられます。2台の安価なロボットからの情報で高度な地図を作ることもできます」(アルドチェルワン氏)

Phase 1 : Robots-as-a-Service

出典:Rapyuta Robotics

同社は第1フェーズとして、Robots-as-a-Serviceアプリを大型施設の監視や風力発電の点検などに提供し、第2フェーズでは、第三者にロボットに特化したクラウドプラットフォームを提供していくという。2016年9月にはベータ版の販売を開始する。「日本ユニシスはRapyuta Roboticsと共同でセキュリティ配送サービスと設備点検サービスの開発を計画しています。日本ユニシスの位置情報連動方式の認証技術や、画像処理などAIを取り入れて、業務の効率化を目指します」と大堂は語る。

台風から電力を生み出す
プロペラのない風力発電機

2つ目がチャレンジブルな風力発電機を開発するチャレナジーとの連携だ。将来の電力供給源として注目される風力発電だが、強力な台風では破損するなど事故も起きる。「強風が吹いて、風向きも変化しやすい台風に立ち向かうためには、根本的な発想の転換が必要です」と、チャレナジーの代表取締役CEO、清水敦史氏は指摘する。そこで同社ではプロペラなしの風力発電機の開発に取り組んできた。

チャレナジーが開発を進める垂直軸型マグナス風力発電機(画像提供:チャレナジー)

「強風対策として、プロペラの代わりに“マグナス力”を利用するのが1つ目の特徴です」と清水氏。マグナス力とは、野球のカーブボールが曲がるのと同じ原理で、風や水の流れの中で円筒や球を回転させたときに、流れの方向に対して垂直方向に力(揚力)が働く現象のこと。プロペラの代わり取り付けられた円筒を自転させるとマグナス力が発生し、風車全体が回転することで発電する。

「マグナス式のメリットは円筒の自転数によってパワーを制御できること。しかも、円筒は単純形状なので、プロペラよりも丈夫で低コストに作れる可能性があります。また、2つ目の特徴として、垂直軸型にすることで、あらゆる風向きに対応できるだけでなく、低重心化や、メンテナンスの容易化も期待できます」と清水氏は語る。

マグナス式と垂直軸型を組み合わせた風力発電機はまだ実用化されていないが、同社は独自の技術による世界初の実用化を目指しており、2015年に実施した風洞実験では、30%以上のエネルギー変換効率を達成し、風速20m/sでも安定的に発電できる結果が得られたという。2016年夏には沖縄県南城市で台風環境下での発電に挑戦する実証実験を予定している。狙いは台風発電市場の開拓だ。「乗り越えるべき課題も多いが、実用化に成功すれば、ハザードマップをエネルギーマップに変えられる」と清水氏は意気込む。

イラスト出典:i:ENGINEER https://haken.inte.co.jp/i-engineer/human/challenergy

この沖縄での次世代風力発電サービスの実験は、日本ユニシスと共同で行われる。そこでは発電量の可視化や、異常検知、予兆把握にIoT遠隔監視システムが活用される。それを支えるのは日本ユニシスのEnergy Management SystemとIoT Business Platformである。「IoT Business Platformは、センサーからネットワーク、データ収集・加工・分析・機械学習までをワンストップで提供するプラットフォームです。風力発電機の状態監視を行うことで、稼働率の高い発電環境を実現します」と大堂は語る。

原子核の崩壊を利用した
決して破られない認証素子

3つ目は、量子認証素子「クァンタリオ」を活用した新しいコンセプトでIoTの安全確保に取り組むクァンタリオンとの連携である。「クァンタリオは原子核の崩壊という人間が介在できない事象を情報処理に利用する、IoTの安全性確保に向けた世界初のデバイスです」と同社代表取締役CEOの根岸邦彦氏は語る。

クァンタリオでは、原子核の崩壊に伴うアルファ粒子を検知して、暗号化のための乱数を発生させる。「原子核の崩壊をランダムパルス信号に変換することで、兆の桁の衝突しない乱数を発生させることができます。電磁的記録に頼らないので、素子が複製できませんし、暗号も解けません。自律的にIDを生成するので、IoTに求められる兆単位のスケールのネットワークにも対応できます」と根岸氏は解説する。

現在、同社はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業として素子の開発に取り組んでいる。IoTのあらゆる用途に対応できる4mm角のクァンタリオを来年完成させ、世界最速の乱数発生器として量産体制に入るという。

実用化にあたっては、日本ユニシスの「情報改ざん防止のソフトウェア技術」と組み合わせることで実現する。これにより、兆単位で生成する暗号鍵を安全な暗号通信に適用できるようになり、金融サービス、無線モジュールなどの認証への利用など広範なサービスへの応用が期待される。

クァンタリオ事業のロードマップ

出典:クァンタリオン

素子自体がユニークで使い捨ての乱数で守られている量子認証素子クァンタリオを利用したデバイスは、ヒトとモノの認証基盤となり、安全性の確保に不可欠なコアデバイスとなる可能性がある。「サイバー攻撃への対抗、なりすましの防止にも有効で、IoT時代の新しいセキュリティ対策として利用できます。様々なネットワークサービスのエコシステムを構築する場合に、安全なデータのやり取りを保証するコアデバイスとして位置づけ、サービスをつなぎます」と大堂は語る。これらの取り組みから“今チャレンジしているものだけが未来を変えられる”という熱い思いが伝わってくる。