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事例経営戦略

「攻めの運用管理」の実現に向け
ユニアデックスとの連携を強化
富士フイルムが挑むICTインフラ領域のアウトソーシングサービス活用

2017年7月7日

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの普及を背景に、富士フイルムグループにおけるIT部門への期待は高まっている。その期待に応えるべく、同グループではIT全体を視野に入れた変革を進めている。コア領域でのスキル強化に向けて、ITアウトソーシングは重要なテーマだ。以前からアウトソーサーを活用していたのだが、2016年にはユニアデックスも加わった。同グループはユニアデックスとのパートナーシップをもとに、ITサービス改革を加速させようとしている。

インフラと技術、人材、組織の観点でIT部門を強化する

富士フイルムグループは8万人近い従業員を擁し、世界各国でビジネスを展開している。連結会社の数は270社余り。グループの多様な事業をつなぐITの役割は、ますます高まっている。同グループのIT高度化への取り組みにおいて、その中核に位置するのがデータである。

富士フイルムホールディングス株式会社
経営企画部 IT企画グループ
グループ長
柴田英樹氏

富士フイルムホールディングス 経営企画部IT企画グループ グループ長の柴田英樹氏は「AIやIoTの技術は急速に進化しています。ビジネスの様々な場面で生成される大量のデータを、いかに収集し価値に転換するか。今後、その能力が企業の競争力を左右すると考えています」と語る。

事業や機能の壁を越えてデータを収集し、同時に大量のデータを整理、分析する能力を高める必要がある。そのためにはインフラと技術、人材、組織、それぞれの観点でのパワーアップがIT部門に求められる。

一方、現実を見るとIT部門には無視できない課題もある。柴田氏は3つの課題を挙げる。

「まず、役割の拡大と問題の複雑化・高度化。例えば、デジタルを活用したイノベーションへの期待は高まっていますが、IT部門はそれに対応しきれていないのが現状です。次に、量と質の両面での人材の不足。そして、コスト抑制への圧力です」

図1 IT部門の期待役割の変化出典:富士フイルムホールディングス

図1は、最初の課題であるIT部門の役割の変化を示したもの。経営層、営業やマーケティング部門、事業部門からは、IT部門に高度な役割が求められるようになった。これに対応し、同グループのIT部門は人材の最適配置に向けた取り組みを行っている。

競争優位性との関係が低い領域では
クラウドなどの外部活用を推進

人材の最適配置と密接な関係にあるのが、ITソーシングである。どの業務を社内に残し、どの業務をクラウドやアウトソーシングに移行するか。その判断基準について、柴田氏はこう説明する。

「競争優位性との関係が低い業務領域では、クラウド活用など外部活用を進める方針。一方、競争優位性との関係が強い領域では、ブラックボックス化を避けるためにも内製化を進めます。その中でも、特定事業における固有性が高いものについては、事業部門への思い切った権限移譲も検討します」

図2 富士フイルムホールディングスのITソーシング戦略出典:富士フイルムホールディングス

同時に、IT部門の存在意義を再定義した。それは「外部ベンダーも、事業部門も創出できない価値を示すこと」(柴田氏)。つまり、事業部門が個別で実施するにはリスクが高すぎ、全社共通で展開するメリットが大きいもの、そしてビジネスの差別化要因につながるようなITプロジェクトに取り組む。こうした考え方に基づき、同グループは「攻めのIT」と「守りのIT」の施策を整理し直した。アウトソーシングの活用も、その一環である。

「ITアウトソーシングについては、2011年から活用しています。その狙いはビジネスに貢献できる業務プロセスを支え、同時にITを継続的にコストダウンしつつ企画・提供すること。これにより、IT子会社としての価値、技術者としての価値の両方を向上させたい」と柴田氏はいう。IT子会社の人員は160人ほど。アウトソーシングの活用により、技術者の戦略領域へのシフトが進んでいる。

2011年以来のアウトソーシング活用により、一定のコスト削減が進んだものの、改善活動やユーザー満足度の観点では必ずしも十分な成果が上がらなかったようだ。こうした課題の解決を目指して、柴田氏らはITサービス改革に着手。そのキーワードはITサービスマネジメントとユーザー満足度向上、マルチアウトソーシングの活用、戦略的パートナーシップ、ITサービス改革の推進、攻めの運用管理である。同グループはこうした取り組みを進めるため、戦略的なパートナーとしてユニアデックスを選んだ。2016年のことである。

適材適所のサービスを活用し
マルチアウトソーシングを実現

ITサービスマネジメントの強化に向けて、同グループはITIL準拠を推進している。

「以前から進めていたITIL準拠を徹底し、グローバルで通用するITサービスマネジメントを目指す。例えば、ITIL準拠のツールを採用して、標準化・共通化を図っています。人材のスキル向上、ノウハウ蓄積も進めています」と柴田氏はいう。

ユニアデックスが加わり、適材適所のマルチアウトソーシング体制が実現。このことは、ユーザー満足度にも好影響を及ぼしているようだ。2011年に契約を結んだアウトソーサー(X社)は現在も継続しており、X社は中国拠点からサービスを提供している。一方、ユニアデックスのサポート拠点は国内にあるので、日本語対応がよりスムーズになった。

また、X社の受付窓口が領域や内容ごとに分かれているのに対して、ユニアデックスでは窓口が一本化されている。窓口の受付時間にも若干の違いがある。X社は9時から17時40分、ユニアデックスは8時から18時である。「ちょっとした変化かもしれませんが、ユーザーの利便性は高まっています」と柴田氏は話す。

ユニアデックスのサービス対象エリアは、ネットワークやセキュリティ、ファイルサーバー、PCなどのITインフラ全般。ユニアデックスへの業務移管は、2016年から2017年にかけて段階的に進められた。最終フェーズが完了してすべてのサービスがユニアデックス側に移管されたのは2017年2月である。「これだけ短期間で移管できたこと自体、高い価値があると考えています」と柴田氏。富士フイルムグループはITサービスのさらなる変革、そして攻めの運用管理の実現に向けて、ユニアデックスとのパートナーシップを一層強化する考えだ。