close

フィンテック金融

ブロックチェーン
広がる“取引革命”、社会インフラへの応用も

2016年12月14日

ビジネスエコシステムを語る上で欠かせない、着目すべきキーワードをピックアップし、そのトレンドの一端を紹介する本企画。今回は、「ブロックチェーン」にスポットを当て、その動向を探ってみたい。

ユーザーの信頼で築く「情報の鎖」

「ブロックチェーン」とは、インターネット上の暗号化した取引記録(ブロック)を鎖(チェーン)のように連結し、取引の参加者同士が互いに承認、保存する仕組みを意味する。連結したデータを複数端末で管理するため安全性が高いことや、システム構築コストを抑えられるなどの特徴を持つことから、近年大きな注目を集めているテクノロジーだ。

ブロックチェーンとは出典:経済産業省「平成27年度 我が国経済社会の
情報化・サービス化に係る基盤整備」報告書の資料を基に作成

現在、世の中に流通するお金は各国の政府や中央銀行が発行し、その価値が一定に保たれるよう管理されるのが原則だ。「A社がB社に○○円送金した」「Cさんが自分の預金口座から○○円引き出した」といった取引記録は極めて重要であり、消失、改ざんの発生は経済の根本を揺るがす事態に直結する。このようなリスクを回避するため、金融機関は巨額を投じて継続的なシステム開発を行い、安全性の確保に努めてきた。また、1990年代には実物の貨幣を使わずデータで決済する「電子マネー」が登場し、広く使われている。

一方、これとは別に、特定の国家や企業が価値を保証しない「仮想通貨」が存在し、新たな決済手段として注目を集めている。なかでもサトシ・ナカモトを名乗る人物が考案したとされ、2009年に運用を開始した「ビットコイン」は管理者を置かず、取引台帳を全ユーザーが共有することで通貨価値を保証する仕組みを採用しているが、そのための技術として生み出されたのがブロックチェーンなのである。

このような経緯からブロックチェーンは「仮想通貨のための技術」と捉えられることも多いが、実際には様々な分野で応用可能な技術である。従来の情報システム構築で不可欠だった管理用サーバが不要なことや、データを分散保管して消失、改ざんのリスクを軽減するといった特徴は、金融にテクノロジーを活用するための一連の取り組み「フィンテック」の推進に適したものだ。

例えば、送金の分野では、これまで使われてきたネットワークを経由せず独自のブロックチェーンを利用することで手数料が大幅に下がることから世界各国の銀行が構築に参加しており、早ければ2017年にも商用サービスが開始される予定である。証券分野では米NASDAQが未公開株取引でブロックチェーンの試験運用を実施しているほか、投資家からの資金調達にブロックチェーンを使う企業も現れている。

また、ブロックチェーンは金融以外の分野でも活用が期待されている。例えば、これまで国や管理団体が行っていた登記、特許などの権利証明は、ブロックチェーン上で管理すれば大幅なコストダウンと効率化が可能だ。経済産業省はブロックチェーンの展開が有望な市場規模を70兆円以上と試算しており、今後は日常生活の様々な場面で使われる技術になるはずだ。

「インターネット以来の大発明」と呼ばれるブロックチェーンだが、解決すべき課題も残されている。まず挙げられるのが「スピード」だ。リアルタイムで変化する現代ビジネスでは、迅速かつ正確なデータ処理が求められる。分散型のブロックチェーンは従来のシステムに比べて処理に時間がかかるため、即時性が求められる取引の主力となるレベルには達していない。また、利用者のプライバシー保護やセキュリティ対策が不十分との指摘もある。実用化に向けた動きが加速する中で、これらの課題をどのようにクリアしていくのか、技術研究の真価が問われる段階を迎えている。