close

フィンテック金融

デジタルテクノロジーにフォーカスする広告業界がFinTech時代のコミュニケーションをリードする
「Financial Foresight Forum」対談レポート

2017年3月27日

現在、金融機関、広告代理店、生活者の関係には、急速なボーダーレス化が進んでいる。そうした中で「消費者を知り、動かす」ために必要なのは何か――。デジタルテクノロジーの活用を通じてコミュニケーション・プラットフォーマーへの転換を目指すアサツー ディ・ケイ(以下、ADK)の森永賢治氏と、金融業界でITを中心とする新サービスの企画立案やシステム導入を長年にわたって手がけてきたグッドウェイの代表取締役社長、藤野宙志氏が、FinTechの現在と未来について語り合った。

>> 関連記事:FinTechは新たなフェーズに突入――「Financial Foresight Forum」フラッシュレビュー はこちら

日常生活のあらゆるシーンに
金融サービスが溶け込んでくる

株式会社アサツー ディ・ケイ
国内基幹事業セクター
統合ソリューションセンター統括
兼ソリューション・プランニング本部長
森永賢治氏

ADKは売り上げ全体の中で金融カテゴリーが占めるシェアが大きく、数ある総合広告代理店の中でも「金融に強い広告会社」として知られている。

このADKが今、FinTechに向けた施策を強化させている。Financial Foresight ForumのSession 4には、その一連の取り組みを牽引しているADK 国内基幹事業セクター 統合ソリューションセンター統括 兼 ソリューション・プランニング本部長の森永賢治氏が登壇。グッドウェイ 代表取締役社長の藤野宙志氏を聞き手とし、「広告業界がリードする異業種連携によるイノベーションとは」と題する対談が行われた。

「そもそもなぜ広告代理店であるADKが、FinTechに興味を持ったのでしょうか」という藤野氏の問いかけに、森永氏が示したのが次のような答えである。

1つは、FinTechが様々な業界に与えるインパクトである。「FinTechは金融業界に起こった激変ではなく、あらゆる業界に共通するお金をテーマとした激変であるというのが、私たちの認識です」(森永氏)

株式会社グッドウェイ
代表取締役社長
藤野宙志氏

もう1つは、「FinTechの時代において、決済は生活者との新たなコミュニケーションの場面になるのではないか」という考え方だ。これまでの決済は顧客の購買行動における最終プロセスであり、マーケティングの観点からはあまり重視されていなかった。どうやって自社のブランドや商品に興味や関心を持たせるか、どうやって顧客をショップに呼び込むのかといった前段階のプロセスにほとんどのパワーが割かれてきたのだ。

だが、今や決済のあり方も多様化している。すでにプリペイドカードやポイントを使った支払いが浸透しているが、さらにそこにFinTechによる新たな方法が加わるのだ。

例えば日用品などちょっとした買い物をしたとき、チャットツールで店舗にスタンプを送ると支払いが完了するといったサービスが、おそらく近いうちに日本でも実現するだろう。こうなるともはやそこには決済という感覚はない。日常生活のあらゆるシーンに金融サービスが溶け込んでくるというイメージだ。

「そうなったとき顧客との最も大切な接点となるのは、お金を支払ってくれる瞬間ではないでしょうか。その接点において顧客によりよい体験を提供するコミュニケーションを確立できれば、必ず次の購買にもつながっていくはずです」と森永氏は語る。

広告会社自身も組織体制や
ビジネスモデルを変えていく必要がある

実際、こうした時代の変化を肌感覚からつかみ、乗り遅れてはならないと金融機関もFinTechを見据えた動きを加速させている。

「特に金融機関の様相が大きく変わってきたのがこの2~3年で、銀行や証券などのクライアントを訪問すると、『もっと詳しくFinTechの最新事情を調査してきてほしい。そうじゃないと話にならない』と逆にハッパをかけられているほどです」と森永氏は語る。
では、こうした金融機関は具体的に何を知りたいと思っているのだろうか。「異業種である広告代理店に対して、彼らはどんなことを期待しているのでしょうか」というのが、藤野氏から投げかけられた質問だ。

「現在、スタートアップ企業を中心に様々なモバイルアプリやガジェット、あるいはブロックチェーンを利用したサービスなどが次々に生み出されています。それらのFinTechが世の中に定着したとき、生活者の意識や購買行動、ライフスタイルがどのように変わっていくのかを金融機関は知りたがっているのです。将来を予測することができれば、そこから逆算して、今打たなければならない手を考えることができますので。まさにそこが問題の本質で、長年にわたって常に生活者のことを考え、密着してきた私たち広告会社の知見やノウハウに対する期待が高まっているようです」と森永氏は答える。

一方、こうしたニーズの高まりに対して「広告会社もまた組織体制やビジネスモデルを変えていく必要があります」と説く。その“実験の場”の1つとして、統合ソリューションセンター(ISC)が位置づけられているわけだ。

藤野氏は、「現在、ISCには約300人の社員を集め、デジタルテクノロジーに焦点を当てたチャレンジを行っていると聞きましたが、実際にADK社内にはどのような変化が起こっていますか」と問いかける。

森永氏によると、ISC内にはマーケティング、プロモーション、クリエーティブを担当するチームがあり、そのすべてがデジタルテクノロジーと深く関わっている。「特に注力しているのがデータサイエンスで、そこには大きく2つのテーマがあります。1つはメディアの最適化で、オフラインからオンラインまで複数のメディアを統合的に分析した最適な広告戦略を立案します。もう1つがマーケティング領域におけるデジタルの活用で、生活者の行動の背景にある潜在的な意識を探り出すことで、効果的なターゲットに対してより適切なメッセージを伝えることを目指しています」と森永氏は語る。

FinTechに関しても、そのサービスが生活者の価値観をどう変えていくのかを先駆けてキャッチアップし、新たなコミュニケーション提案につなげていく考えだ。