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AI(人工知能)IoT

IoTの切り札は「尖ったセンシング」と「AI解析力」の組み合わせにあり
IoTはビッグデータやAIと相まって産業構造や個人の生活を革新する

2017年8月18日

IoT(モノのインターネット)は産業構造や個人の生活を大きく変えようとしている。多様なセンサーを通じて蓄積したビッグデータをAI(人工知能)によって解析し、フィードバックするというサイクルを繰り返すことで、モノがどんどん賢くなっていくという概念こそ歴史的なデジタル革命と称されるゆえんだ。この時代の変化を見据えた日本ユニシスの取り組みとはいかなるものか。

自らも変わらなければ
AI産業の小作人になるだけ

IoTにより世の中のあらゆる事象がデータ化され、集められてビッグデータとなる。さらにそのビッグデータをAIによって解析し、得られた知見をIoTにフィードバックする。このサイクルを繰り返すことでAIは学習(成長)を続け、モノはどんどん賢くなっていく。

データの収集・解析・フィードバックが"モノ"を賢くする出典:日本ユニシス

日本ユニシス
執行役員
八田泰秀

Softbank World 2017に登壇した日本ユニシス執行役員の八田泰秀は、「IoTはビッグデータおよびAIと相まって産業構造や個人の生活を大きく変えていきます」と語った。実際、すでにAIは金融、製造、マーケティング、さらには気象や農林水産まで、あらゆる領域において拡大が始まっている。

一方で八田は、「この時代の変化を受け止めて自らも変わらなければ、AI産業の小作人になるだけです」と警鐘を鳴らす。従来の産業の“序列”に依存しない新勢力が台頭し、既存勢力が没落するという秩序の崩壊が始まっているのだ。AIが多くの仕事を奪っていくといった人間と機械の逆転も危惧されるようになった。

「AIが人智を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるのはまだ先の話としても、AIを使ったほうが効率的な仕事は否応なく人間から置き換わっていきます。例えば肺がんの進行度合いをCT画像から読み取る精度は、すでにAIが熟練した読影医に肩を並べたといわれています。技術の進化は止まりませんので、人は、人間にしかできない領域の仕事にシフトしていくことが重要です」と八田は説いた。

強みを生かせる分野で
AI基盤を賢く活用

現在、世界の時価総額トップ5を占めるのは、アップル、アルファベット(Google)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックというグローバルIT企業だが、そのすべてに共通するのが巨額のR&D投資をAIにシフトしていることである。IBMや中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)も同様で、この先にさらに大きな革新が起こることは、もはや疑いの余地がない。AIプラットフォームは、これらの巨大グローバルIT企業によって支配が固められつつある状況だ。

とはいえ、日本企業もただ指をくわえてこの状況を見過ごしていたのでは、まさに「AI産業の小作人」に成り下がっていくばかりだ。

「日本企業には日本ならではの強みを生かせる分野がたくさんあり、そうした先進領域でのAI活用に集中すべきです。例えば自動車やアニメ、ゲームは世界のトップレベルにありますし、防災・減災などでも多くの経験と実績の蓄積があります。AIプラットフォームを賢く利用することが得策です」と八田は示唆した。

日本ユニシスとしても、IoTとAIを組み合わせた日本企業に役立つビジネスプラットフォームを提供している。マイクロソフトのパブリッククラウドサービスAzure上のIoT HubやStreamAnalytics、機械学習などをベースとし、日本ユニシスの独自部品を実装したものだ。このビジネスプラットフォームは、すでに防災科学技術研究所との共同研究による斜面崩壊災害の監視・予兆検知、施設や観光地などを行き交う人の流れや属性を分析する人流解析サービスなどで利用されており、「PoC(コンセプト実証)に要するリードタイムや費用を約50%削減する効果をもたらしました」と八田は強調する。

日本ユニシスのIoT×AIサービス出典:日本ユニシス

さらに日本ユニシスは、今後ますますAI活用が進んでいく時代を見据え、IBM Watsonを日本市場で展開しているソフトバンクを子会社のエス・アンド・アイの株主として迎え入れるという戦略的関係強化にも乗り出している。

ベンチャー企業の独自技術と
日本ユニシスの解決力を融合

そして日本ユニシスが推進するのが、ベンチャー企業の「尖ったセンシング技術」と「AIの解析力」を組み合わせたIoTによる社会のイノベーションである。例えばトンネル、道路、ビルなどの構造物の効率的な維持管理も、そうした中で注力しているテーマの1つだ。

米国の軍事技術として開発されたUWB(超広帯域無線)は、現在、壁や煙の向こうにいる人を検知したり、物流倉庫などで位置検知に使用されているが、日本ユニシスは、さらに感度を高めた「高感度UWBレーダー」を日本ジー・アイ・ティーと共同で開発し、屋内構造物の点検に活用すべく進めている。また荒井電波研究所のUHF帯電磁波レーダーはテロ対策、災害時の人命救助、遭難者捜索、対人地雷探査に使用されており、日本ユニシスは屋外構造物の点検への展開を進めている。

高感度UWBレーダーとUHF帯電磁波レーダー出典:日本ユニシス

「日本ジー・アイ・ティーが有する高感度UWBレーダーや、荒井電波研究所が有するUHF帯電磁波レーダーが持つ壁内部の可視化技術に、日本ユニシスの3次元CADや画像処理、損傷自動検出、予兆AIといった技術を組み合わせることで、これまで目視や打音検査に頼っていたインフラ・設備点検を劇的に改善し、精度を向上、事業化に向け取り組んでいます」と八田は語った。

各社の技術を組み合わせ設備点検が劇的に改善出典:日本ユニシス

また、竹炭やカテキン、アルギン酸ナトリウムなどを利用した長期鮮度保持技術を有する炭化の鮮度保持剤「Tankafresh」は、複数のセンシングデータ(温度・湿度・CO2・加速度)の解析を繰り返すことにより類まれな機能にレベルアップした製品である。

青果物鮮度保持を実現する技術革新出典:日本ユニシス

「例えば日本産の青果物を北米へコンテナ輸送する場合、通常1カ月を要するため途中で腐敗してしまう問題がありましたが、この技術によって鮮度保持期間を6倍超に伸ばすことに成功しています。データの蓄積・解析・製品改良という一連のプロセスを繰り返すことにより、革新的な技術は進化し続けます。このような革新は海運輸送による青果物輸出を可能にするとともに、旬の青果物の出荷時期をずらして市場投入可能にするなど、日本の農業に新たなビジネスチャンスをもたらすと考えています。IoTを活用したこのような取り組みを進めています」と八田は、この技術によって実現するイノベーションの意義を語った。

絶妙なバランスが生み出した革新は進化し続ける出典:日本ユニシス

また、IoT全盛期到来とともに危惧される問題にセキュリティがある。一般的にセキュリティは暗号化・鍵暗号が支えているが、これらは乱数が下支えしている。現在の暗号化のベース技術である擬似乱数は計算によって求められているため予測可能である。このことから昨今「暗号が暴かれるリスク」が専門家より指摘されている。

セキュリティは暗号化・鍵暗号が支えている出典:日本ユニシス

クァンタリオンは原子核の崩壊という人間が介在できない事象を利用した世界初・唯一の真正乱数発生器のワンチップ化に成功。日本ユニシスではこの技術を生かしたライセンスビジネスを進めている。「既存の疑似乱数と違って真正乱数の予測は不可能で、悪意の第三者に暗号が不正解読されるセキュリティリスクを根本から解決します」と八田は強調した。(関連記事:AIドローン×台風発電×IoT……世界が抱える課題を「オープンイノベーション型エコシステム」で解く

推測不可能な真正乱数発生器出典:日本ユニシス

「使える技術」の準備は整っている。新しいビジネスチャンスを創造するためには、尖ったセンシング技術、AI解析といった土台を賢く利用しながら、サービス改良や技術革新に向けて今すぐできることから取り組み、まだ確立していない分野でいち早く勝負に乗り出すことが肝要だ。