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IoTイノベーション

「ワンウェイ型カーシェアリング」への期待と課題、神戸市の実証実験に迫る

2016年8月18日

これからのクルマの利用形態として注目されるカーシェアリング。特に貸出場所と返却場所が異なってよいワンウェイ型は利便性が高く期待も大きい。しかし、特定の返却場所への偏り、車両の保管スペースの確保など運用上の課題も指摘される。神戸市では実証実験を通して課題解決のための運用データを収集した。そこではどんな課題が見えてきたのだろうか。

多くの事業者が連携して
実証実験の場を構築

ワンウェイ型カーシェアリングの導入を検討する神戸市では、2015年8月から2016年3月にわたって、神戸市の都心部を中心に実証実験を行った。ワンウェイ型の課題がどこにあるのかを明らかにするための運用データの収集と分析が狙いだ。

「Sea:mo(シーモ)」と称される今回の取り組みは、地元の観光・イベント事業者である六甲産業が中心となり、神戸市と車両リース・レンタル会社、駐車場事業者などが協力して実施した。長年、高度道路交通システム(ITS)に取り組んできた三菱重工業が需要予測システムを提供し、日本ユニシスとユビテックがカーシェアリングのためのIT基盤を共同で提供した。

実際貸し出しに使われた車両は3車種。三菱自動車のi-MiEV、日産自動車のNMC、トヨタ車体のCOMSである。それぞれ店員が4人、2人、1人と違いがあり、貸出料金も15分あたり350円、300円、250円と差がある。台数は全20台で、NMCが10台、残る2車種はそれぞれ5台が用意された。ただし、NMCは実験途中の2015年11月に導入されている。

神戸市Oneway型カーシェア実証 Sea:mo(シーモ)貸出車両

※NMCは2015年11月21日から導入 資料:各社の発表資料を基に作成

これらの車両がカーポートとなった神戸市内の既設の駐車場に置かれ、利用者はポータルサイトで予約して利用する。利用開始の30分前から15分単位で予約でき、30分以内の利用は無料。ICカードを予約した車両にかざすことで利用でき、車載器がキーのON/OFF制御や定期的な走行履歴の通知などを行う仕組みだ。

運用データ分析

出典:三菱重工業

公共交通を補完できる
ワンウェイ型カーシェアリング

この運用データの分析を担当した三菱重工業 ICTソリューション本部 インフォメーション技術部 ITSソフトウェアグループの長谷川利恵氏は、「実証期間中、登録者は増え続けましたが、実際の利用者数は横ばいでした」と利用形態の特徴を語る。ヘビーユーザーが現れるが、1カ月ほどで使わなくなり、そこにまたヘビーユーザーが現れるといったことの繰り返しだったという。

登録会員を居住区域で見ると、全体の約7割が神戸市在住で、約3割がサービス域である神戸市中央区に在住していた。年齢層は30代から40代が中心だった。頻度は休日が多くなる傾向があり、平日の利用回数が20回前後なのに対して、休日は30回前後になる。車種としては荷物が運べるなど実用性が高いi-MiEVが安定して利用された。稼働率はi-MiEVが5%、全車両平均では3.2%程度だった。

運用データ分析 〜稼働率〜

※突発的に稼働率が高い日があるのは、極端な長時間利用があるため 出典:三菱重工業

「30分以内は無料ということで、おおむね30分程度の利用が多くなっています。実証期間中の利用料の総額と単価を月別に調べると、利用回数は増えても1回あたりの単価が下がり、回数の増加ほど収入が伸びていません。利用者の要領がよくなったためかもしれません」と長谷川氏は指摘する。

実証実験の目的であるワンウェイ型のカーシェアリングの利用状況について長谷川氏は「サービス開始当初は試し乗りという意味合いが強く、貸出場所と返却場所が同一であるラウンドトリップ型の利用が多かったのですが、1カ月くらいするとワンウェイ型が増え、期間中全体では4分の3くらいはワンウェイ型の利用でした」と話す。やはりワンウェイ型への関心は高い。

行動範囲としては、東西方向に電車やバスなどが発達している神戸市の公共交通の事情を反映して、南北方向の利用が多かった。公共交通の補完機能としての役割を担っていることが分かる。また、移動範囲としては大半がカーポートの設置範囲以内で収まり、「こぢんまりとした動き」(長谷川氏)に見える。

運用データ分析 〜利用目的の変化〜

出典:三菱重工業

また、データからはカーポートの近くで実際にクルマを目で確認してからスマートフォンで予約する姿が見えてくる。「利用目的としては、当初は旅行や観光が多く、徐々に買い物、通学、通院などの普段使いへと落ち着いてきています。利用するためにどこから来たかというデータでも、中盤からは市内の自宅からが増え、徒歩で貸出場所に来るケースも増えています」と長谷川氏は指摘する。

事業者の利用も含めた
効率性の追求が必要に

こうした利用傾向以外にも今回の実証実験で見逃せない課題が浮上してきた。それは事業者のメンテナンス利用だ。ワンウェイ型では車両の偏在を解消するための回送が発生し、通常の充電、修理保全、取材やスタッフのトレーニングでも貸出車両が利用される。

特にi-MiEVは利用率が高いためにメンテナンスも多く必要で、かつ4人乗りで事業者にも人気があった。このため、稼働率は平均6.4%と会員のそれを大幅に上回る結果となった。「こうした要因から全体の稼働率が圧迫された可能性もあり、解消する必要があります」と長谷川氏は語る。

運用データ分析 〜メンテナンスによる稼働率〜

出典:三菱重工業

長谷川氏によれば今回の実証実験で得られた知見は大きく3つある。1つは運用データからの知見。事業者の稼働率も併せた効率化と、可視化によるモニタリングを可能にすることの必要性。2つ目は、ユーザーの声からの知見。使いやすい車種の選定やポートの設置などが利用促進のカギとなる。

3つ目が高度分析のプロトタイピングからの知見。「大規模化すると数理モデルを使った解析が必要になる」と長谷川氏は「利用が少ないポートは廃止するなど、変化に追従することが大事です。そのためには、初めから正確なデータを収集できる仕組みが必要です」と語った。

神戸市の実証実験では、カーシェアリングが公共交通の補完手段として有効なことは見えた。今、それを支えるシステム的な仕組みが必要とされているのである。