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地域地方創生異業種連携

世界屈指の文化都市の京都を舞台に国際写真祭を催す
社会課題を共有する文化的なプラットフォームを構築

2017年4月28日

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表現媒体としての評価が日本ではまだ低いと感じられる「写真」の可能性を見据えるべく立ち上げられた「京都国際写真祭(KYOTOGRAPHIE)」が、2017年4月15日に開幕した。2013年に写真家と照明家が立ち上げて、今年で5回目となる。行政や企業・団体、個人のサポートを受けながら、2016年までの来場者は累計で約25万人に上る。この国際写真祭を創設した経緯や運営の仕組みなどを、創設者の1人である照明家の仲西祐介氏への取材を通して、解説していく。

東日本大震災を機に東京以外の発信拠点作りを構想

KYOTOGRAPHIE
共同創設者&共同ディレクター
仲西祐介氏

KYOTOGRAPHIEは、フランスのリヨン出身の写真家であるルシール・レイボーズ氏と福岡出身の照明家である仲西祐介氏が運営している。2011年3月、東京で暮らしていた2人は東日本大震災に遭遇した。「東京も大きく揺れました。ここで本格的な地震が起きたら日本がダメになってしまうのではないかと思い、東京以外に情報発信の拠点が必要だと痛切に感じました」と仲西氏は語る。そこで2人は、東京から京都に移住。「写真を介して、海外と対等の情報交換ができるプラットフォームをつくる」というテーマを掲げ、フランスの「アルル国際写真祭」を参考とした写真祭の開催準備を暗中模索で始めた。

レイボーズ氏と仲西氏は、これまで関わりのあった企業や美術館、アーティスト同士のネットワークなどを駆使することにより世界で活躍する写真家の招聘(しょうへい)を進めていった。しかし、「京都」の協力を得るのは並大抵のことではなかったという。2人とも京都に縁がないうえ、独自の作法を理解していなかったからだ。例えば、行政や在京企業に協力を求めた際、開口一番こんな洗礼を受けた。「京都は日本の古都。すでに町は興っとる。興さんでええ」。そこで2人は、各所を何度も訪ね、趣旨をていねいに説明するなど、話し合いを重ねることで理解を得ていった。

企業からの協賛を募る過程では、この写真祭の立ち上げ当初から、陰に日なたに支援してきたCHANELの日本法人の存在が大きかった。アーティストへの支援活動に熱心な同社は、第1回のKYOTOGRAPHIEから協賛。同社の協賛により写真祭の信頼性を高めることにつながり、他社の協賛を得る“呼び水”になった。

普段は立ち入れない寺院や町家も展示会場に

この写真祭の特徴は大きく2つある。1つは、1000年の歴史を有する京都ならではの多彩な建築物を会場としていることだ。美術館やギャラリーのほか、京都市の協力を得て、世界遺産の二条城や、普段は未公開の寺院、町家などが会場となり、それぞれの空間の個性に合わせて展示の演出を凝らす。来場者は、市内に点在する10を超える会場を巡る趣向だ。2017年は16会場である。

禅寺の書院を用いた「机上の愛」(荒木経惟作、展示会場:建仁寺両足院)

老舗帯匠の蔵を会場にした「Family Album / Love and Ecstasy(イサベル・ムニョス作、展示会場:誉田屋権兵衛黒蔵(こんだや げんべえ くろぐら)」

伝統的な京町家全体を利用し、地元の伝統工芸の職人たちとコラボレーションした
「Between the Light and Darkness|光と闇のはざまに」(ヤン・カレン作、展示会場:無名舎)

もう1つの特徴は、「私たちの写真祭には、単なる資金提供だけの企業はほとんどない」と仲西氏が語るように、企業が知恵や技術を提供することにより、オリジナリティー豊かな展示につながっていることだ。例えばソニーPCLは、フランスのラスコー洞窟より古い、3万6000年前の洞窟壁画の映像インスタレーションなどからなる展覧会「ショーヴェ洞窟」において、4KのLEDディスプレーを提供している。また、額縁の製造・販売を手がける京都市のヤマモトは、荒木経惟の写真展「机上の愛」の会場である禅寺の書院「建仁寺両足院(けんにんじ りょうそくいん)」の畳が傷つかないように配慮した展示フレーム(木枠)の中に入れる作品のコンディションの確認やマット製作に協力している。このように、アートと最先端のテクノロジーや伝統工芸を融合させ、新たな展示形態を提示している。

ソニーPCLの4KのLEDディスプレーを用いた
「ショーヴェ洞窟(ラファエル・ダラポルタ作、展示会場:京都文化博物館 別館1階)」

内外の写真家の育成・交流機能も充実

KYOTOGRAPHIEでは、日本の若いアーティストを支援することを目的に、写真家の発掘や育成を目的としたプログラム「KG+」を同写真祭と同時開催している。メイン会場とは別にサテライト会場を設け、例年100人以上の若手写真家を紹介。これからの活躍が期待される写真家と国内外のキュレーター、ギャラリストの出会いの場を提供している。また子供や学生、プロを目指す人など様々な人に向けたワークショップを開催する。

また会期中は会場で多数のトークイベントも催される。「今世界で何が起き、これから自分たちはどう進んでいくべきなのか。毎年、社会問題や環境問題を語り合う機会をつくっています。写真を介して社会の課題を提起し、国を超えて人が気づき、考えることができるプラットフォームでありたいと考えています」(仲西氏)

会期中、京都市内では、カメラを首にかけた写真の愛好家や美術関係者などが、マップを片手に各会場を散策する姿が多く見られる。「世界を代表する国際写真祭として認知され、10年、20年と続けていきたい」と仲西氏は意気込む。

【第5回 KYOTOGRAPHIE 開催概要】

名称:KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017
会期:2017年4月15日~5月14日
テーマ:「LOVE」
主催:一般社団法人 KYOTOGRAPHIE
共催:京都市、京都市教育委員会
メインスポンサー:BMW
入場方法:各会場にてチケット販売(価格は会場により異なる。一部会場は無料。『美術館「えき」KYOTO』を除く全会場を1回ずつ入場可能なパスポートもあり)
URL:http://www.kyotographie.jp/

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