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ロボット医療

テクノロジーは人間と未来を“共創”する
コミュニケーションロボットが入院患者を癒やす

2016年7月25日

昭和大学横浜市北部病院はユニアデックスと共同し、認知症病棟や小児病棟などの入院患者に対する癒やしの追求の一環として、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の導入検証を始めた。進化するテクノロジーは人間の仕事を奪うわけでも、圧倒するわけでもなく、人間との協働作業によって、これまでにない“気づき”や“感動”を生み出すのである。

AI、ロボットは人間の仕事を奪うのか
それとも未来へ夢を与えるのか

今日のAI(人工知能)の進展により、“賢さ”を備えた人間型ロボットなど、一昔前にはSFの世界でしか見られなかったようなテクノロジーが、誰でも、簡単に、すぐに使える時代を迎えつつあるといわれている。

しかし、これらのテクノロジーは一方で、「将来人間の仕事を奪っていく」「人間を知能で圧倒するようになる」など、大きな不安を与えているのも事実だ。こうした状況に対して「過度に心配する必要はありません。むしろ未来に向かう夢のほうが大きいのです」と語るのは、ユニアデックス 未来サービス研究所の所長を務める小椋則樹氏である。

同研究所は、「同じ未来を想うことから。」というコーポレートメッセージを掲げる、ICTインフラ企業において未来に向けた新規サービスビジネスの創出を目的として活動している。「お客様と一緒に未来像を共有・共感し、その目標をどのように実現するかを共に考えていく。デジタルテクノロジーを駆使することでこれまで思いつかなかったより多くの“気づき”を創り上げていく。これにより感動を与えるサービスを提供していく」というコンセプトを活動方針の中で示している。

ユニアデックス 未来サービス研究所のサービスコンセプト

出典:ユニアデックス

ここでいう“感動”とはいかなるものなのか。人間は予期していなかったことが起こったときに、“すごい!”と感じて、新しい可能性を見いだしていく。「そうしたICTを中心としたテクノロジーによる創発を、例えば人間の“癒やし”といった“気持ち”の領域でも起こすことができるのです」と小椋氏は語る。すなわち、それこそがユニアデックスの目指すイノベーションの姿である。

ロボットが入院患者に
楽しみや癒やしを提供する

かつてない未来の癒やし空間を病院内に創り出すべく、昭和大学横浜市北部病院はAIサービスなどと連携して動く人型ロボット「Pepper」の導入検証に踏み出した。

昭和大学横浜市北部病院における、AIで動く人型ロボットの導入

出典:昭和大学横浜市北部病院

同院の病院長を務める世良田和幸氏は、「そもそもPepperに興味を持ったのは、『Pepper App Challenge 2015』のコンテストで、『ニンニンPepper』という認知症患者支援アプリが最優秀賞を受賞したのがきっかけです」と話す。

毎朝、高齢者に目覚まし機能で呼びかける、孫の写真を胸のタブレットに表示するなど、ニンニンPepperの機能は極めてシンプルなものだが、その分かりやすさ、親しみやすさこそが認知症患者にも受け入れられ、大きな効果をもたらしたようだ。

さらに2016年に入ると3月4日時点で、全国の医院やクリニックで導入されたPepperは250体を超えるまでになった。こうした動向を目の当たりにして、同病院は「テクノロジーが成熟しつつある」と判断したわけである。

もっとも、同病院が当初計画していたのは「受付用案内ロボアプリ」というもので、外来患者に対して各診療科への行き方を表示したり、簡単なゲームで遊んで待ち時間の退屈を解消したりといったサービスを提供するだけのものだった。

この構想を大きく膨らませたのが、ユニアデックスとの出合いだ。小児病棟の子どもたちとのコミュニケーション、認知症病棟における脳トレなどのレクリエーション、緩和病棟や精神科の患者の気持ちの和らげ、病院だよりの説明、さらにはロビーコンサートやクリスマス会の司会まで、ロボットが入院患者に楽しみや癒やしを提供する“ロボてなし”へとどんどんアイデアが広がり、Pepper活用においてタッグを組むことになった。

「例えば認知症病棟の患者さんは同じことを何度も話す傾向がありますが、Pepperは同じ話を何百回、何千回と繰り返しても、嫌な顔ひとつせずに真摯に答えてくれます。患者さんと一緒に歌ったり、踊ったりすることもできます。こうした人間にはできない癒やしのコミュニケーションによって刺激を与え、認知症の進行を少しでも遅らせることができたなら、そこには計り知れない価値があります」と世良田氏は語る。

認知症病棟、小児病棟で
Pepperデモを実施

実際、認知症病棟で行われたPepperデモはおおむね好評で、「音楽やクイズなど、高齢者が興味の対象とするイベントがよかった」といった感想が得られた。また、「顔の認識機能を活用して、患者さんの名前を呼んだり、イベント参加を確認したりといった演出があれば、もっとよいのではないか」「季節やイベントニュース、お誕生日などのコンテンツを盛り込むことで、患者さんとのコミュニケーションはもっとスムーズになるのではないか」といった前向きな意見も寄せられた。

同様のPepperデモは小児病棟でも行われ、比較的元気な子どもたちに対して「ゲームで遊んでもらうことができた」「AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』に合わせて一緒に体を動かすことができた」といった感想が寄せられた。また、医療現場のスタッフに「付き添いの家族に対しても癒やし効果を演出する必要があることを痛感した」といった“気づき”を促したことも、大きな成果として捉えられている。

一部には、「話題性はあるが、人件費の削減につなげたいのか?」「人間の代わりをさせたいと思っているのか?」といった厳しい意見も寄せられたが、世良田氏は「Pepperが人間の代わりになるとは考えておらず、むしろPepperの演出のためには看護師たちとの連携が重要であることを、改めて認識しました」と否定する。

そして、“環境保護運動の母”と評される、米国の生物学者レイチェル・カーソン氏の「もしも私が妖精に話しかける力を持っているとしたら、世界中の子どもたちに生涯消えることのない“The Sense of Wonder”(神秘さや不思議さに目を見張る感性)を授けてほしいと望むでしょう」という言葉を引用しつつ世良田氏は、外界と触れる機会の少ない長期入院の患者たちにより大きな楽しみや癒やしを与えるべく、今後も様々なアプリの拡充を図っていく意向を示す。