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イノベーション経営戦略

オープンイノベーション
世界の先進企業が続々採用。日本企業も追随する動きが活発化

2017年1月31日

ビジネスエコシステムを語る上で欠かせない、着目すべきキーワードをピックアップし、そのトレンドの一端を紹介する本企画。今回は、「オープンイノベーション」にスポットを当て、その動向を探ってみたい。

開かれた環境下で「自前主義」から脱却

「オープンイノベーション」とは、開かれた環境で行われる新たな変革を意味する。積極的に外部の技術やアイデアを取り入れることで共に成長を目指すというこの概念は世界的な広がりを見せつつあるが、同時に日本のビジネス界が抱える問題点を浮き彫りにする形にもなっている。

言葉としてのオープンイノベーションは、米国の経営学者ヘンリー・チェスブロウ博士が2003年に著した書籍『Open Innovation: The New Imperative for Creating And Profiting from Technology』で初めて示された。従来の研究開発は、自社内ですべての業務を手がける「クローズドイノベーション」が主流だったのに対し、本書では自前の技術にこだわらず、他社や大学の研究成果も導入することでより大きな成果が得られると説いている。言うまでもなく、ビジネスシーンで外部の力を活用する試みは古くから存在した。例えば自社で不足している技術を社外の研究機関に委託したり、より生産コストの低い工場へ下請けに出したりすることなどは広く行われている。しかし、オープンイノベーションは「必要に応じて」ではなく、「課題解決に欠かせない条件」として外部との連携を捉えることに特徴がある。

オープンイノベーションの定義出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(オープンイノベーション協議会事務局)
オープンイノベーション白書 初版」の資料を基に作成

現代ビジネスにおいて、技術革新を意味する「イノベーション」は自社の競争力を高め、業績を拡大する原動力として重視されてきた。各企業は優位性を確保するために人材を確保し、巨費を投じて研究開発に取り組んできた歴史を持つ。ところが最近、この原則が根本から覆される状況が現れている。それは「自前主義の限界」が明らかになったことに起因する。企業間の競争が激化したことに加え、顧客ニーズが目まぐるしく変化することにより製品開発のスピードが加速したことで、もはや自社の技術だけでは対応できないと考える企業が増えた。各産業分野で世界有数の規模を誇る企業が続々とオープンイノベーションを採用し、まさに時代のトレンドとなっているのが現状である。従来の下請け、元請け関係とは一線を画し、参加者がそれぞれ得意な要素を持ち寄って最大化して全体の成長に結びつけるという考え方は、極めて合理的だといえるだろう。

オープンイノベーションは当初、主に研究開発部門で導入された。なかでもIT分野は長年にわたって協業に積極的で、複数ベンダーの製品(ハードウェア、ソフトウェア)を統合したシステム構築が普及している。最近では様々な分野の業種で同様の取り組みが行われているほか、開発に限らずビジネスモデルやサービスにまで領域を広げた連携が模索されている。例えば自動車業界ではAI(人工知能)を駆使した自動運転技術や、利用者のニーズに合わせたライドシェアといった新たな要素に対し、広く門戸を開放してアイデアを募る動きが活発化している。

このようにメリットばかり強調されがちなオープンイノベーションではあるが、円滑に進めるには解決すべき課題も多い。まず求められるのは参加者の意識改革だ。「自前主義が成り立たないから外注する」「出資してくれるなら切り売りする」といった感覚では、いずれ思惑が食い違って決裂する結果につながるだろう。目先の利害にとらわれず、すべての参加者が満足できる成果を上げることがポイントだ。

また、オープンイノベーションを実現するためには「コミュニケーション」が欠かせない。外部との連携を考えるには、まず担当部署、事業部など企業内の意思疎通を密にして、何が不足しているのか、何を提供すべきかを明確にする必要がある。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が昨年発表した「オープンイノベーション白書」によると、オープンイノベーションを推進する企業は増加しているものの、大学に拠出される研究費の割合は諸外国に比べて低く、人材流動も少ないという結果が示された。自前主義からの脱却は難しいことだが、今後オープン化の流れが進むのは間違いない。どのように対処すべきか、早急な判断が求められている。