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イノベーション

ビジネスエコシステムを構築し
社会課題の解決に挑む
多様なプレーヤーと共にオープンイノベーションを推進

2016年7月25日

日本ユニシスの掲げるキーワードは「ビジネスエコシステム」。多様な分野のプレーヤーと共に、社会課題の解決を目指す。そのためには、イノベーションやビジネスモデル変革など様々なチャレンジが求められる。組織文化や人材育成などの視点も重要だ。ビジネスエコシステム創造に向けたポイントについて、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠木建教授と日本ユニシスの平岡昭良社長が、日経BPイノベーションICT研究所 桔梗原富夫所長のモデレートの下、議論を深めた。(本文中敬称略)

岩手県での地域医療介護連携、
バリューカード事業に見る非連続性

日本ユニシス
代表取締役社長
平岡昭良

桔梗原 日本ユニシスは「ビジネスエコシステムで社会課題を解決する」というメッセージを発信し、具体的な取り組みを進めています。まず、ビジネスエコシステムとはどのようなものか説明していただけますか。

平岡 テクノロジーの進化や法規制の緩和、ビジネスモデルの多様化などを背景に、業界の垣根は消滅しつつあります。また、様々な分野で業界秩序の破壊が起きています。世の中がダイナミックに変化する中で、私たち自身も変わっていかなければなりません。これまで、当社は1つの企業の課題を深掘りし、その課題をICTで解決するというビジネスを続けてきました。しかし、これからの時代にはそれだけでなく、新しいサービスのデザインと創造が求められます。特に社会課題に向き合うためには、日本ユニシスの力だけでは足りません。様々なお客様やユーザー、ベンダーをつないで新しい価値を創造する必要があります。その全体像をビジネスエコシステムと呼んでいます。

桔梗原 具体的な事例があればご紹介ください。

平岡 岩手県の気仙医療圏でスタートした地域医療介護連携「未来かなえネット」において、当社はシステム構築を手がけました。医療や介護などに関する多様なデータを一元管理し、医療リソース不足という課題解決を目指す。既存システムを最大限有効活用できるだけでなく、将来に向けた拡張性や柔軟性を備えた仕組みです。

ビジネスエコシステムを形成する地域医療介護連携「未来かなえネット」

出典:日本ユニシス

桔梗原 医療の課題はますます切実なものになっています。多くのプレーヤーが連携するビジネスエコシステムは、この課題に対する解決アプローチになりそうですね。

平岡 もう1つは、2011年にスタートしたバリューカード事業です。コンビニの店舗などに陳列されているプリペイドカードを、多くの方が目にしたことがあると思います。このバリューカードの価値はサーバで管理しており、店舗のレジで入金処理するまでは価値が発生しないので、盗難防止や在庫管理の負荷を軽減することができます。サービスの立ち上げ当初は苦労しましたが、今では特にクレジットカードを持たない若年層にオンラインショップを利用する際の決済手段として広く使われています。

楠木 非連続なイノベーションの典型例ですね。コンビニでは以前からICT化が進んでいますが、そのビジネスの中からは生まれにくい発想だと思います。エコシステムというと、最初に誰かが全体像を設計するようなイメージが強いかもしれません。しかし、現実に起きているイノベーションの多くは、最初は“小商売”として生まれています。これも、そういうものですね。

平岡 その通りです。最初は数種類のカードから始め、徐々に大きなエコシステムへと成長しました。

提供するものが変われば、
マネタイズのモデルも変わる

桔梗原 バリューカードのエコシステムにおける日本ユニシスの役割は、どのようなものですか。

平岡 新しいサービスを実現するためには、まずカード発行会社やコンビニチェーンを説得する必要があります。その上で、エコシステムに参加する企業とシステム連携するためのゲートウェイの仕組みを構築。当社はICTの提供にとどまらず、一部ではビジネスに踏み込んでエコシステムづくりをリードしました。

桔梗原 日本ユニシスとしては、どのような形で収益を上げているのですか。

平岡 従来のビジネスモデルはシステムの構築や運用の対価をいただくというものですが、このサービスは利用ごとに課金する仕組みです。

一橋大学大学院
国際企業戦略研究科教授
楠木建氏

楠木 報酬の受け取り方も変わったということですね。イノベーションの多くには、同じような特徴があります。つまり、提供するものが非連続に変わったとき、もうけ方も非連続に変化する。マネタイズの形が変わらない場合、それはイノベーションではなく、往々にして進歩の一種ということが多いですね。

桔梗原 イノベーション、または非連続な変化を起こすために、組織や企業文化はどのように変わるべきでしょうか。

平岡 重要なポイントは脱自前主義だと思っています。当社の具体例としては、充電インフラシステムサービス「smart oasis(スマートオアシス)」があります。充電設備をネットワーク化しているので、ドライバーは簡単に空き設備を探したり、充電の予約を入れたりすることができます。また、ユーザーを認証した上で課金する仕組みもあります。私たちはこのシステムのインターフェースを公開することで、充電設備メーカーや車載器メーカー、あるいは小売りチェーンなど設置企業との連携を加速し、充電インフラの一層の拡充を目指しています。さらに、先日発表しましたが、これからは風力発電事業にもチャレンジします。こうした取り組みを通じて、クリーンな社会づくりに貢献していきたいですね。

中立的なポジションを生かして
多様なプレーヤーと連携する

日経BP社 執行役員
日経BPイノベーションICT研究所長
桔梗原富夫氏

桔梗原 従来とは全く異なる事業に挑戦する場合、新しい発想やイノベーティブなアイデアが求められると思います。イノベーションを担う人材像について、楠木先生はどのようにお考えですか。

楠木 既存の価値の延長上に進歩を目指す場合には、インセンティブが有効です。外在的な報酬を設計し、個々人の頑張りを促すというやり方ですね。電気自動車をフル充電して走行できる距離を延ばすといった、進歩を目指すプロジェクトでは外在的な誘因が効きますが、イノベーションに対しては有効とは思えません。イノベーションをドライブするのは、内発的な動機です。「これが面白い」、「とにかくやりたい」と思う人にやってもらうのが一番。イノベーションは、個人の名前が重要な世界です。

平岡 先ほど電力関係の新ビジネスを紹介しましたが、そこには中心的な役割を担うキーパーソンがいます。その社員は社内電話帳に「ビビッときたら私に連絡ください」というメッセージを載せていて、社内外のいろいろな人たちと連携しながらアイデアを形にしています。そんなタイプの社員をいかに増やすか。簡単ではありませんが、とても重要なテーマです。

桔梗原 イノベーションを牽引する人材を育成するために、日本ユニシスではどのようなアプローチを考えていますか。

平岡 価値創造に向けて、私たちは知財の連鎖を重視しています。これまでのビジネスの中で蓄積した経験、新しい分野への挑戦を通じて得た知見などを連携、再活用していきたいですね。具体的な活動としては、アイデアソンやハッカソンなどを実施しています。これには、外部の方々にも参加してもらっています。「Next Principal」という人材育成の取り組みもあります。また、様々なダイバーシティ施策も、人材育成やイノベーションの促進につながるものと考えています。

桔梗原 今後、オープンイノベーションに向けた取り組みは一層重要になりそうですね。

平岡 外部のベンチャー企業と一緒に活動する機会は増えています。新しい技術の発掘や育成に関しては、ビジネスプランコンテストを開催しています。コンテストには、国内外から多数のチームがエントリーします。日本を代表する大手企業数十社と共に立ち上げた「リアルテックファンド」という技術特化ファンドもあります。日本ユニシスには自社製品にこだわる文化はありません。世の中にあるいいものを受け入れ、それらを組み合わせてお客様に提供してきました。このような中立的なポジションは重要だと思います。また、ベンチャー企業から提案があったときなどに、「まずは聞いてみよう」という姿勢を大事にしています。当社にはもともと、オープンイノベーションと親和的な文化があるように思います。

桔梗原 様々な分野の企業と共に、ビジネスエコシステムを構築する上でも重要な文化ですね。すでに動き始めているエコシステムの成長、そして今後生まれるエコシステムの新たな価値創造に期待しています。