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イノベーションワークスタイル変革

オープンイノベーションの機会を創出するオフィス
日本土地建物が新シェアオフィス「SENQ」を開設、その狙いとは

2017年2月17日

オープンイノベーションの機会創出を狙う新しいタイプのシェアオフィスが東京・京橋に登場した。その名は、「SENQ(センク)」。「ラウンジ」「ブース」「ルーム」という3タイプのワークプレイスで構成する。施設を運営する担当者が、入居者間やパートナー法人との間をつなぎ、入居者の事業創造や事業成長を支援する。同社への取材を通してSENQの仕組みを解説していく。

スタートアップ企業やベンチャーを支援

SENQ京橋の
「ブース(半個室)」

市街地再開発事業により大型ビルが建ち並ぶようになってきた東京・京橋。2016年11月、「京橋エドグラン」内に「SENQ京橋」が開設された。2層吹き抜けで心地よい共用ラウンジ(約60席)を中心に、半個室のブース(11室)や個室の「ルーム」(6室)が配置されている。

開発・運営するのは、東京圏を中心に不動産開発事業などを展開する日本土地建物(本社:東京都千代田区)だ。「ICTの進展や労働人口の減少などを背景に、働き方が大きく変わりつつある中、オフィス賃貸事業の差異化の一環で、多様な人々がコラボレーションし、オープンイノベーションが起こる場を提供することを決めました」と同社都市開発事業部次長の倉橋良之氏はSENQ開設の背景を語る。東京・青山に完成する自社ビル内に「SENQ青山」を、東京・霞が関の同社本社ビル内に「SENQ霞が関」を2017年2月中にそれぞれ開設する。

写真上段:左からSENQ青山の「オープンエアオフィス」と「ワークプレイス・会議室」、
写真下段:左からSENQ霞が関の「ラウンジ」と「ボックス席」

「SENQ」では、主に3つの機能を提供する。1つ目の機能はワークプレイスだ。開放型の「ラウンジ」、間仕切りで独立感を持たせた1~3人用の「ブース」、通常のオフィスに当たる「ルーム」。会議室などの共用スペースのほか、複合機や給湯器、ロッカーなどオフィスに不可欠な設備をそろえている。SENQの入居希望者は「ラウンジ」や「ブース」「ルーム」など、利用するワークプレイスの種類に応じた会員種別を選ぶ。

SENQが提供する3つの機能出所:日本土地建物

事業創造や事業成長へ、法人と提携協定

2つ目の機能はビジネスマッチングだ。「マネージャー」と呼ばれる日本土地建物の施設運営担当者が、入居者間のマッチングやマッチングイベントの企画・開催などを通じて、入居者同士の協業や共創を支援する。

そして3つ目の機能はインキュベーションである。ここでは入居者の事業指南役になる「メンター」や事業連携先になる「アライアンスパートナー」が、重要な役割を果たす。「マネージャー」が入居者をこれらの個人・法人に引き合わせ、入居者の事業創造や事業成長を支援する。

「メンター」を派遣する朝日新聞社やNTTドコモ・ベンチャーズ、キリン、クックパッド、コクヨ、サザビーリーグ、スターバックスコーヒージャパンなどの法人14社、「アライアンスパートナー」であるサイバーエージェント・クラウドファンディング、サニーサイドアップ、みずほ銀行、東海大学などの12法人とはすでに、提携に関する協定を締結済み。今後もこれらパートナー法人の参画を募っていく。

テーマを設定し相互刺激やコラボを誘発

日本土地建物
都市開発事業部次長
倉橋良之氏

これら3つの機能を眺めるに、SENQはビジネスマッチングやインキュベーションの機能も備えてオープンイノベーションを促す新しいタイプのシェアオフィスといえるだろう。

オープンイノベーションを促す工夫の1つは、立地する場所の地域性に応じてテーマを設定している点だ。「SENQ京橋」では「フード・イノベーション」、「SENQ青山」では「クリエイターズ・ビレッジ」、「SENQ霞が関」では「リード・ジャパン」を掲げる。「リード・ジャパン」は他の2つとは切り口がやや異なるが、社会や地域の課題解決に向けた共創の場と位置付けている。「入居者同士、たとえ業種は異なっていても、事業領域に共通点があれば、相互の刺激やコラボレーションを誘発しやすいという利点があります」。テーマ設定の狙いを倉橋氏はこう説明する。

フード・イノベーションをテーマに掲げる「SENQ京橋」には、共用スペースの1つとして「シェアキッチン」と呼ぶ共用の調理スペースを設けてメニューを試作する場を提供。さらに、SENQ京橋に隣接するゾーンには日本土地建物が運営するカフェを配置しており、SENQで開発したメニューを期間限定で販売するなどして、テストマーケティングの場として利用することもできる。

「当社では京橋エドグラン全体のタウンマネジメント業務を受託しています。その一環として、1階の広場で開催する予定の『食のイベント』も、テストマーケティングの場として活用してもらうことが可能です」(倉橋氏)

SENQ京橋の「シェアキッチン」

SENQのもう1つの工夫は、京橋、青山、霞が関、という「SENQ」ごとの枠を超えたマッチングも視野に入れている点だ。それぞれのSENQが掲げるテーマは異なるものの、「フード」と「クリエイター」の領域で、しかも地域課題の解決に結び付く事業の創造も考えられる。こうした各地域のSENQの枠を超え得る動きをしっかり捉え、関係する入居者間のマッチングにも取り組んでいく予定だ。

オープンイノベーションを促す仕組み出所:日本土地建物

向こう10年でさらに7カ所を開設へ

さらに、「SENQ」の提供機能の1つであるインキュベーションの中で紹介した「メンター」「アライアンスパートナー」の仕組みも、オープンイノベーションを促す工夫の1つに挙げられる。

これらの前提として、SENQの入居審査は通常のシェアオフィスと違って、そこで掲げるテーマと入居希望者が目指す事業の整合性や他の利用者とのコミュニケーションの積極性を問う。「入居審査では、SENQで何をしたいか、何を期待しているのかを聞くようにしています」と倉橋氏。オフィス所在地にブランド力のある地名が欲しい、利便性の高い場所にワークプレイスが欲しい――。シェアオフィスに対するそうした表層的なニーズとSENQは一線を画しているといえるだろう。

日本土地建物は向こう10年でさらに7カ所、SENQを開設することを目標に掲げている。時代の変化を見据えた「場の提供」は、従来型の「空間の提供」から一歩踏み出した不動産開発会社のイノベーションの象徴ともいえる。

日本土地建物株式会社

東京都千代田区霞が関1-4-1
 会社:http://www.nittochi.co.jp/
 SENQ:http://www.senq-web.jp/
1954年設立の総合不動産デベロッパー。オフィス、住宅などの開発、CRE(企業不動産)戦略支援、私募リート運用など、多岐にわたる事業を展開している。