close

AI(人工知能)ロボット

サービスロボットから見えてきた
AIがもたらす人間中心の世界

2016年7月25日

AI(人工知能)を持ったロボットの登場で、ロボットと人間の関係が大きく変わろうとしている。人間の仕事がロボットに取って代わられるという危惧を抱く人もいるが本当だろうか。私たちはロボットをどう見るべきなのだろうか。そこにどんな変化が起きているのだろうか。ロボット導入のポイントと未来のロボットの役割を考えてみたい。

Photo:Courtesy of Fellow Robots

技術の進化が加速する
新たなロボット革命

今ロボットのイメージが変わりつつある。以前のロボットの代表例は工場で稼働する工作用ロボットだろう。実際に自動車の組立工場では数多くのロボットが働き、その数は人間よりも多い。そこでのロボットは、大変高価でありながら、プログラムされた特定の単純作業をこなすだけ。変化には対応できずに、人間にとっては近づくと危険な存在である。

「しかし今、ロボット革命が起きています」と米国のロボットベンチャー企業フェロー・ロボッツのCEO、マルコ・マスコロ氏は指摘する。「ロボットは賢く、パワフルになり、しかも人と同じ場所で働くことができます。もちろん、危険はありません。人を助けるための存在なのです。背景にあるのは、技術の急速な進歩です」(マスコロ氏)。ロボット工学における技術は、ムーアの法則のように指数関数的に進化を遂げており、今まさに飛躍的発展へ向けた大きな転換期を迎えているという。

今日の変化は指数関数的

出典:フェロー・ロボッツ

「2年後の2018年には、ロボットが生活に大きな影響を与えるようになります。ロボットが人間を補うのです。実際、すでに掃除ロボットや手術ロボット、強化スーツ型ロボットが登場しています」とマスコロ氏。ロボットは正確な動作を、繰り返し継続して行うことができるが、柔軟性は限られる。一方、人間は複雑な作業ができ、複雑な問題をその場で解決する柔軟性を持つ。「ロボットと人間の組み合わせで、素晴らしいことができるのです」とマスコロ氏は力説する。

自律移動型サービスロボット「NAVii」
出典:フェロー・ロボッツ

そのマスコロ氏のフェロー・ロボッツが開発したのが、自律移動型サービスロボット「NAVii(ナビー)」である。自動小売りロボットプラットフォームとして提供されている。

日本ユニシスでは、汎用機からUNIXサーバ、Windowsサーバ、そしてWebサービスコンポーネントと、長年小売業をシステム面から支援してきた。日本ユニシスの常務執行役員 CMO、齊藤昇は「ロボットはフロントシステムの仕組みの1つ」と指摘する。

実証実験から考える
人間とロボットとの関係

果たしてロボットは小売業のフロントシステムとして活用できるのだろうか。「最初はNAViiについて懐疑的に見ていました。しかし、米国の店舗で活躍する姿を見て、そこに大きな可能性を感じました」と齊藤は話す。その可能性を検証すべく、日本のヤマダ電機で実証実験が行われた。

実証実験が行われたのは、ヤマダ電機テックランド青葉店。2015年秋からフェロー・ロボッツと共同で準備を始め、2016年2月1日から3月19日にわたって店頭にNAViiが導入された。検証する機能としては商品の検索とその商品の場所までの案内、チラシ商品などテーマに沿った複数の場所に案内するツアー、そして仮想店員「らびたん」としてのコミュニケーションである。

ヤマダ電機様 実証実験内容

出典:日本ユニシス

「店員の負荷は減るのか、お客様はどんな反応を示すのか、といった点を検証したいと考えていましたが、アンケートからは興味深い結果が得られました」と齊藤は語る。期間中に約400人の来店者が1~2回NAViiを利用し、286件のアンケートが集まった。平日を含めた平均利用数は1時間あたり3件。土日には1時間あたり7~8件というケースもあった。

「特徴的だったのが、ほぼ全世代の人たちが利用し、全体の90%以上が、違和感がなかったと回答していることです。価格比較や値引き、特売商品の表示などの要望が寄せられ、その場で決済したいという意見もありました」(齊藤)。そこから見えてくるのは、ロボット店員に対するさらなる期待だ。決してネガティブではない。

日本ユニシス総合技術研究所長の羽田昭裕は「スマートフォンとNAViiの違いは、全体を人間がコントロールしている点です」と指摘する。スマートフォンの指示に従って人間が動く、スマートフォン中心のスタイルではなく、NAViiでは人間がやりたいことに対してロボットを利用している。そこからは人間中心のロボットとの関係性が見えてくる。

今のロボット革命は
ビジネスにどう役立つのか

ロボットの活用はビジネスにどんな影響を与えるのか。ロボットが大量生産され、価格が下がることで、人を雇うより安いといったことなのだろうか。齊藤は「ロボット活用のROI(投資利益率)は、このロボットで何人、人が減らせるという視点で考えるべきではありません」と指摘する。「ロボットを導入することで、人の機能が補完され、これまでできなかったことができるようになる点に注目すべきです」(齊藤)。具体的には販売ロスを防ぐとか、人間の生産性が向上するといったことだ。

注目したいのは、ロボットが収集する膨大なデータの存在だ。ロボットはカメラで映像を記録することができ、装備したセンサーから様々なデータを収集することができる。羽田は「ロボットであれば、人間より視野の広い情報を集めることができます」と人間との違いを強調する。

人間は恣意的に情報を集めるが、ロボットであれば取れる範囲の情報はすべて収集できる。それを分析することで新たな知見がもたらされる。ロボットによって、あらゆる情報を記録し、取りまとめ、振り返ることができるのである。齊藤は「ビッグデータの観点からもロボットの活用が重要になります」と指摘する。

今回実験に使ったNAViiでも、案内した動線をすべて覚えておくなど、人間の能力を補完できる“あらゆる情報を記録する”機能が搭載されている。「NAViiはお客様から聞かれたことをすべて記録します。それを分析することで気づきがもたらされ、効率化や生産性向上のための施策を打ち出すことができます。大事なのはロボットが提供できるこうした付加価値なのです」とマスコロ氏は語る。

こうしたロボットの優位性は、センサーの発達とともにさらに膨らんでいくことが予想される。

未来につながる変化の兆しと
日本ユニシスの取り組み

データを集めた先にあるのは、成果につながるアクションを促す仕組みだ。「来場者に若年層が多いことが分かったときに、テレビの売り場で若い人向けの曲を流すといったきめ細かい対応も可能になります」と齊藤は未来を示唆する。IoTとビッグデータを掛け合わせれば実現できる世界だ。それを支えるのはクラウドの技術だ。「あらゆるデータがクラウド上にあれば、スケールアウトが簡単になります。クラウドからロボットにデータを流すことで、多店舗展開も容易になる」とマスコロ氏は語る。

「今は店の中と外という区切りがありますが、ロボットを通して外の世界からの情報も簡単に得られるようになります。それを使って人間に情報を与えたり、ナビゲーションしたりといったミックスリアリティーの世界も考えられます」と、羽田は情報活用の発展形を示唆する。店舗内だけでなく、他店舗の在庫情報なども駆使して、ワンランク上のサービスを提供することも可能だ。

羽田は「リニアモーターカーが走り、宇宙エレベーターが建設される未来では、人間が動ける範囲も変わってきます。ロボットやAIを利用しなければ対応できません」と未来の姿を描く。そのために日本ユニシス総合技術研究所では、環境や心理を認識するユーザーインターフェースや3D認識、機械学習/深層学習の技術開発を目標として掲げている。

日本ユニシス総合技術研究所における技術開発の目標

出典:日本ユニシス総合技術研究所

こうしたテクノロジーの進化はビジネスの世界だけでなく、社会全般を変えていく。人と都市のつながりも変わり、ライフスタイルや働き方も変わってくる。齊藤は「一企業の力ではこうした課題を解決することはできません。日本ユニシスとしてはベンチャー企業をはじめとして様々な企業や団体とエコシステムをつくり上げて対応していく」と意気込みを語る。同社のDNAと他企業の力がどんな相乗効果を生み出すのか。ロボット活用の取り組みも含めて、今後の展開に期待したい。