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イノベーション経営戦略

シェアリングエコノミー
「所有」から「共有」へ――経済の未来を変えるか

2017年3月30日

ビジネスエコシステムを語る上で欠かせない、着目すべきキーワードをピックアップし、そのトレンドの一端を紹介する本企画。今回は、「シェアリングエコノミー」にスポットを当て、その動向を探ってみたい。

市場規模予測は2025年に33兆円突破へ

シェアリングエコノミーとは「共有する経済」を意味する。一般的に経済は商品やサービスを求める消費者に対してメーカーが生産して提供し、消費者が購入するという一連の流れで構成されるが、シェアリングエコノミーは、そこに「共有」という考え方を取り入れ、必要なものを購入するのではなく、保有する人から貸し出しを受けて利用するものだといえる。この「購入せず利用」という方法自体は一般的なものだ。レンタカーやDVDをはじめ、様々な分野でレンタルの仕組みが整備され、広く普及している。では、最近よく耳にするシェアリングエコノミーは、従来のレンタルとどこが違うのだろうか。

シェアリングエコノミーが広く知られるきっかけになったのは、2008年に米国でスタートしたAirbnb(エアビーアンドビー)だ。このサービスはユーザーが保有する空き部屋を宿泊場所として提供するもの。ホテル不足の深刻化もあって順調に業績を伸ばし、現在世界190カ国以上で利用されている。また、自動車での移動を希望するユーザーに相乗り可能なドライバーを紹介するUber(ウーバー)、Lyft(リフト)などのサービスも米国で立ち上がり、各国に広がりつつある。

図1 海外におけるシェアリングエコノミー型サービスの例出典:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

これらは貸し出しという意味では従来のレンタルと同様だが、サービスの提供、運用方法の部分で大きな特徴がある。それは積極的なICTの活用だ。利用登録から予約、支払いに至るまですべての手続きがサイト上で行えるほか、サービス提供者と利用者が相互に評価し合うシステムを用意するなど、安全に取引するために多くの工夫が凝らされている。このようなサービスの成長は米国でスマートフォンの普及が進んだ時期と重なっており、場所を問わず手軽にインターネットの利用が可能になったことが発展につながったと思われる。コンサルティング会社のPwCが発表した予測によると、シェアリングエコノミーの市場規模は2025年には3000億ドルに達する見込みだ。

図2 シェアリングエコノミーの市場規模出典:PwC「The sharing economy – sizing the revenue opportunity」

シェアリングエコノミーの潮流は、日本でも広がりつつある。例えば自動車関連では、会員登録を行ったユーザーが車両を共同で利用する「カーシェアリング」や、駐車場の所有者が外出中のドライバーに空きスペース情報を提供するサービスが人気だ。ほかにも家事代行の仲介、不用品の売買・貸出、ペットの世話といった様々な分野で新しいビジネスが生まれ、今後の展開に期待が高まっている。

CtoCの成長で変貌する経済社会

急速な成長を遂げつつあるシェアリングエコノミーだが、解決すべき課題も残されている。なかでも重要なテーマが信頼性だ。

例えばレンタル事業では、利用にあたって安全、確実にサービスが受けられるよう各種の契約、取り決めを行うことが義務づけられている。最近のシステムはスマートフォンで簡単に契約できる便利さがある半面、事故やトラブル発生時の対応に不安を抱く人が多いのも事実である。また、現在定められている法律、規制の多くは従来型のビジネスを対象にしているため、シェアリングエコノミーの領域はいわゆるグレーゾーンになっている。例を挙げると、上記のAirbnbは観光客への「民泊」提供手段として注目されているが、その部屋が安全基準を満たしているかを確認することはできない。この状況を打開するための法整備も進められているが、まだ追いついていないのが現状だ。シェアリングエコノミーによって個人間の自由な取引を広げるためには、新たなルールづくりが欠かせない。

また、これまで長年にわたって商品、サービスを提供してきた企業にとっても、シェアリングエコノミーの発展は注目すべき要素だ。大量生産・大量消費が美徳とされた時代は終わり、現代は「いかにしてモノを有効活用するか」が課題になっている。消費者の連携、CtoCの拡大を意味するシェアリングエコノミーの動向に注意を払い、長期的な戦略を考える必要があるだろう。