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マーケティングモバイル

新しいビジネスエコシステムで
集客と購買に貢献する

2016年7月25日

大日本印刷と日本ユニシスは、新規事業として広告ビジネスに取り組む。それが、「スマートキャンペーン」である。メーカーと流通小売業などをICTでつないで、メーカーにとっては対象商品の販促を、店舗にとっては送客などのメリットをもたらす。キャンペーン期間中でも前日までの顧客行動を確認できるのが特長の1つだ。これにより従来のハガキ応募型のキャンペーンではできなかったことが実現する。デジタルを活用して進化した“次世代のキャンペーン”である。

メーカーが広告主となり
送客、購買などの効果を狙う

近年、ショッピングにおける決済手段の多様化に伴い、決済情報をマーケティングに活用する「CLO(Card Linked Offer)」が注目を集めている。CLOとは、顧客情報や顧客の決済情報に基づいて販促などを行う手法であり、数年前から米国で始まったデジタルマーケティング施策だが、最近は日本のクレジットカード会社などの間にも広がり始めている。

CLOの広告主となるのはクレジットカードの加盟店など。目的は店舗での購買である。クレジットカード会社は、カードの利用傾向などを踏まえて会員のスマホアプリなどにクーポンを配信する。

加盟店はクレジットカード会社に対して、会員へのキャッシュバックやポイント割り増しなどのクーポン配信を依頼する。これを受け取った会員は、スマホアプリのクーポンを選んでエントリーボタンをクリックする。その後、対象カードを使って該当加盟店で買い物をすると、後日クーポンに記載された特典を得ることができる。買い物の際、クーポンを提示する必要はない。

米国で始まったCLOは今、日本でさらなる進化を遂げようとしている。それが、大日本印刷と日本ユニシスの提供する「スマートキャンペーン」である。

従来のCLOとの大きな違いは、スマートキャンペーンの広告主が食品や消費財などのメーカーであること。また、利用するデータも決済情報ではなく、POSで収集される購買情報であること。さらに対象カードはクレジットカードではなく、流通小売業などが発行する会員カードで、スマホアプリを提供するのも流通小売りの企業だ。

スマートキャンペーンの概要は下図の通りである。広告主となるメーカーが自社商品についてのスマートキャンペーンを行う場合、流通小売業の会員サイトまたはアプリを通じてキャンペーン情報を配信する。これにより、キャンペーンに参加する店舗への送客、メーカーが提供する対象商品の購買を促すという仕組みだ。

スマートキャンペーンとは

出典:大日本印刷&日本ユニシス

ハガキ応募型キャンペーンに比べ
準備期間を短縮、コストを低減

一方、キャンペーン情報を受け取った生活者(流通小売業の会員など)の利用イメージは下図のような流れになる。キャンペーンの告知対象者は、流通小売業発行の会員カードを持つ顧客。スマホアプリなどでその情報を知った会員は、商品に興味があればエントリーボタンを押して参加を表明する。

生活者のご利用イメージ

出典:大日本印刷&日本ユニシス

その後、該当する店舗で会員カードを提示して買い物をすると、POSからの購買証明データによりスマートキャンペーンへの応募が完了する。レジでクーポンを提示する必要はない。日本ユニシス インダストリサービス第2事業部 デジタル推進室の鈴木悟嗣は次のように説明する。

「メーカーのキャンペーンでは、商品パッケージに応募条件などが記載されていたり、商品に応募シールが貼ってあったりすることがよくあります。その場合、消費者は店で商品を見て初めてキャンペーンを知ることになります。スマートキャンペーンなら、事前にスマホアプリなどを通じて本人に告知することができます」

また、購入を証明するレシートをハガキに貼って応募するキャンペーンもある。POS情報で購入を確認できるスマートキャンペーンは、顧客がレシートを貼る必要もハガキを送る必要もない。

キャンペーンのプロセス短縮やコスト低減も、スマートキャンペーンの大きなメリットだ。商品に貼り付けるシールを用意する必要はなく、会員サイトやスマホアプリ向けの簡単なコンテンツをつくるだけ。また、応募ハガキを集計する手間も不要だ。

加えて、キャンペーンのバリエーションも豊富。ポイントバックだけでなく、景品プレゼントやキャッシュバックなど多様な特典に対応することができる。

「例えば、商品を1個買うごとにスマホアプリにスタンプを押し、スタンプ5個で1応募といったキャンペーンも可能。4個の会員には、『あと1つで応募できます』というメッセージを送ることもできます」(鈴木)

大日本印刷と日本ユニシスによる
広告事業がスタート

流通小売業の中には、すでに会員向けにスマホアプリを提供している企業も少なくない。スマートキャンペーンは、こうした既存のスマホアプリにも容易に接続できる。

会員の反応をすぐに確認できるのも、アナログのキャンペーンとの大きな違いだ。ハガキ応募などの手法では、キャンペーンが終了しないと結果をつかめない。スマートキャンペーンでは、対象商品がどれだけ売れたか、どの程度の集客があったかといった前日までの状況を広告主や小売店、会員アプリ運営者などがWebの管理画面で確認できる。

広告主にとってはキャンペーンの露出を増やすとともに、高い応募率が期待できるキャンペーンを低コストで実現できる。一方の小売店にとっては、POSデータを提供することで、メーカーの力を借りて店舗への集客を図れる。また、会員アプリの運営者はキャンペーンによってアプリの活性化、会員の増加などの効果が見込める。

以上見てきたように、スマートキャンペーンはビジネスエコシステムの1つである。大日本印刷と日本ユニシスにとって、大きなチャレンジだと鈴木は言う。

「これはSIやクラウドサービスではなく、メーカー様の販促施策と小売り様の送客施策をつなぐ、私たちにとって新しいビジネスの始まりです」(鈴木)

2015年10月から11月にかけて、スマートキャンペーンの実証実験が行われた。参加したのはメーカー6社と、イズミが西日本で展開する「ゆめタウン」と「ゆめマート」の113店舗。40日余りの取り組みだったが、従来型ハガキキャンペーンとの比較で5.4倍(6社の平均値)の応募があったという。

このような結果を見た上で、2社共同の事業がスタートした。キャンペーンのあり方が今、大きく変わろうとしている。